TOP > 金木犀の香り
金木犀の香り
患者さんのお宅を回る日々の中で、困ることがあります。
もともと会話(おしゃべり)が得意なほうではないので、妙な沈黙の時間が出来てしまうことがあるのです。そういう経験をしていくうち、何か話の種をいくつか仕込んでおこうかと考えるわけです。
無難なところでは、やはり天候の話題でしょうか。
私は患者さん宅を自転車で回っていますので、暑い時は汗をかき、寒い時には鼻を赤くして、玄関を上がっていきます。今の季節で言えば、「金木犀の香り」でしょうか。主張の強い芳香はすぐ気付きます。
そうして、辺りを見回し、どこに木があるかを確認するのです。この時期でないと、そこに立つ高木が金木犀であるとは気付かずに通り過ぎてしまっています。短い花期のうちに、精一杯の自己アピールと言うところでしょうか。
担当している患者さんには、外出がままならない方が多くいらっしゃいます。そういう方に、季節の便りを届ける、そんな役割を担うことが出来ればとの想いで、今日も自転車を走らせています。(ひよこがねい)